もうメガネなしには何も読めなくなって何年も経ちました。
その間きょうまで何個ものメガネたちとの出会いと別れがありました。
はじめてメガネを買ったとき大きな専門店に入ってしまい場違いな気がしたものです。初めてメガネを買うので気が張っていたように思います。大きな店だと安心かなと思いましたから。
スーパーの中にあったこじんまりしたメガネ屋さんでよかったかな、と後悔しました。
まだ要らなかったかもしれない、 早かったかな、もう少し何かしら手を尽くすことがあったんじゃないかな、などなど、 そんなに歳をとった気がしていなかったうちにメガネ先行もねえ、 などなど、ぐずぐず

眼鏡店の静寂さとご丁寧すぎる対応に押されながら、これこれシカジカで字がよく見えないのでメガネを作って欲しいのですが、と言うと流れるように一人がさあさあどうぞ2階へと受付の人から私を受け取って案内してくれる。2階にはまた別の担当がいてにこやかに、いらっしゃいませ、お眼鏡ですね、と迎えてくれた。
まずは別室の眼科医のいる部屋で検眼がありしばらく座っていると先ほどの愛想のいい女性が現れ、ではこちらへどうぞ。
なんだか大層な買い物に来たようでやっぱり場違いな気がする
広い部屋にたくさんのメガネに囲まれて担当の女性と二人だけなのも緊張するものでした。
チラシで大体いくらくらいのがいいか見当はつけてきたものの、あんなにピンからキリまであるとは思いません。奥に誘われて足を運び、これなどお似合いかと存じますがと言うのを見ると、何やら重々しいどこぞの奥様が毛皮に埋まりながらキラリと光らせているようなのが差し出されました。 気になるお値段は、え?? フレームだけですよね??? 思わず咄嗟に、あのうチラシにあったコレコレくらいのものが欲しいのですが、と言葉が出ていました。
まあその時の彼女の上品な顔がまるで舌打ちしているように見えたもんです。

え?? ああ、そちらはそちらでいいのですがお品は丈夫じゃないですしデザインもたくさんはありませんし、こちらのでいかがです??
やっぱり押してくるじゃありませんか
でも、彼女はもう1度私を見つめてから若い男性スタッフを呼びました。
その瞬間の一瞥が素早かったのも感心して記憶に残っています、ささっと私の持ち物からコート、靴をチェックして値踏みの確認をしていました (やれやれ、だから場違いだって)
1階から上がってきた爽やかな若い男性もにこやかに、落ち着いていらっしゃいませ、と声をかけてきた。眼鏡屋さんは若いスタッフも落ち着いているんだと感心しながら会釈をしていると、先ほどではないもののまだ手の届かないのを何点か見繕ってくるので、同じ繰り返しで、チラシにあったこれこれくらいのが欲しいのだと説明。
聞いているのかいないのか、黙って、にこやかに鏡の前に座らせて、いかがですか?
若々しく華やかになりますね、と、押してきます。
ここでは誰も希望を言っても聞いてくれないんだと諦めて、改めて説明しました。
この程度の予算のでないと困るんだと訴えなければいけませんでした。
そこでやと解放されて1階
にまた戻されました。1階は受付と、程よいお値打ちメガネの部屋でもありました。
なんだかくたびれてメガネは普通の買い物とは違うんだとわかりました。
1階スタッフの深々としたお辞儀、お見送りのありがとうございましたのハーモニーが
背中で聞こえていました。
いやー、、、、すっかり初めてのお使いの緊張にくたびれて、いつもはコーヒーで済ませるところを自分慰労で高価なパフェなどゆっくり綺麗なスプーンで味わい、後日出来上がったメガネを受け取るときにもまたこの喫茶店にきて,その時はコーヒーにしようかな、などもう次の時を考えていました。今度は受け取るだけだから緊張することもないだろうと気が楽です
あの体験ももう何年前になったことか。あれから何個も無くしたり気づかずにフレームに腰掛けてしまって折れてしまったりなどで、もうすっかり、初めに強く希望の値段を伝え、フレームの形、ガラスの形も伝えるようになりました。 ただ、安いと知ったらどのスタッフもモチベーションが下がるところを見ると、眼鏡屋さんにはスタッフ個人の売り上げ目標やインテイブがあるのかもしれないですね
いい年して初々しい買い物でした。
