顔を一瞬、声を真似る
音声と映像の偽造時代が始まった
――もう始まっている「音声+顔チラ見せ詐欺」の現実
「顔も見たし、声も本人だった」
それでも騙される時代に、私たちはもう入っています。
最近増えているのは、
音声を真似、顔を一瞬だけ見せる詐欺です。
長く話しません。
はっきり映しません。
それでも人は「確認した気」になってしまう。
氾濫しているネット上の個人情報を巧みに組み合わせて使います
- 「顔は本物・声は最小限」事前に入手した 本物の動画(SNS・過去のビデオ通話)
- それを 録画再生 または 部分的に加工
- 音声は「はい」「うん」「ごめん」程度
会話は成立させない
顔を見せた事実だけを作る
以下は今世界で起きている、実際に起きた事例です。
事例1
社長の顔が数秒映った
(ドイツ・フランクフルト周辺/企業送金詐欺)
ある企業の経理担当者に、
「至急、社長がオンラインで話したい」
という連絡が入りました。
Zoomに入ると、
・社長の顔が数秒だけ映る
・声、口調、話し方はいつもの社長
・背景はオフィス風で、少しぼかされている
社長は短く言いました。
「急ぎだ。詳しい説明は後でいい。
今すぐ指定の口座に送金してほしい」
その直後、
「回線が不安定だ」と言って映像が消え、音声だけになります。
経理担当者は疑いませんでした。
社長は普段から“結論だけ言う人”だったからです。
▶ 結果
数億円規模の送金。
詐欺だと分かったのは、本物の社長が会社に戻ってからでした。
事例2
娘の泣き声だった
(アメリカ・アリゾナ州/家族なりすまし詐欺)
高齢の母親の携帯に、泣き声が入りました。
「お母さん……助けて……」
声は間違いなく娘。
言葉の癖も、息の乱れ方もそっくりでした。
すぐに男性の声が割り込みます。
「娘さんが事故を起こしました。
今すぐ示談金が必要です」
ビデオ通話に切り替わると、
・娘の顔が一瞬だけ映る
・暗く、斜めから
・「顔はこれ以上見せられない」とすぐ画面が切れる
母親は動揺し、指示された通り送金。
▶ 結果
娘はその時間、普通に仕事中。
声は、SNSに投稿されていた動画から作られた偽物でした。
事例3
「本人確認に応じた」ことで騙された
(イギリス・ロンドン/投資詐欺)
警戒心のある男性が、相手に言いました。
「本人なら、顔を見せてください」
相手はすぐ応じます。
・スマホ画面に顔が映る
・ただし暗く、数秒だけ
・「通信が不安定ですね」と通話終了
その後、こう言われました。
「今、顔を見せましたよね?」
男性は、確認を取った気になってしまい、
話を進め、最終的に資金を送ってしまいます。
▶ ポイント
「顔を見せた」という事実が、
安心材料として逆に利用された例です。
事例4
市役所職員を名乗る“ビデオ確認”
(日本・関東地方/高齢者被害)
高齢の男性の固定電話に、
「市役所です。給付金の確認です」
という電話が入りました。
途中から
「本人確認のため、スマホで顔を確認します」
と言われ、ビデオ通話に。
・職員らしい服装
・顔はほんの一瞬
・すぐに書類の話へ移行
男性は安心し、
口座番号や暗証に近い情報を伝えてしまいます。
▶ 結果
後日、口座から不正な引き出し。
市役所がビデオ通話で確認することはありませんでした。
事例5
上司の声と顔で動かされた
(香港/多国籍企業)
若い社員に、
「上司からの緊急連絡」が入りました。
Teamsの会議に入ると、
・上司の顔が一瞬映る
・複数人が同席しているように見える
・全員が短く、要点だけ話す
「極秘案件だ。
今すぐこの処理をしてほしい」
若い社員は命令に従いました。
▶ 結果
数十億円規模の被害。
会議にいた“全員”が、実在の人物を元にした偽物でした。
なぜ、こんなに簡単に騙されるのか
理由は実はこんなに簡単です。
ベースの素材は実際の顔写真や音声などネットに溢れる、SNSやメールなどから簡単に制作可能になったので、耳と目で確認したはずだから安心だと錯覚させます。
・顔は一瞬でいい
・声は感情が伝わればいい
・急がせて、考える時間を作らせない
慌ただしい中でも確認した気になってしまうように仕組んでいる
「自分は大丈夫」「今、確認したんだから大丈夫」と思うことが、時代遅れになっているのです。そう思わせることが詐欺師たちの腕の見せ所。
2弾と3弾で警察の警告と、私たちがどうしたらいいのか自衛策をお届けします